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選択と集中の時代

  • 2022/03/14
  • Dr.ウエノの保険コラム

メニューは山盛りの“野菜炒め”1本勝負。去年12月、こんな異色の飲食店が、東京・渋谷の繁華街の一角にオープンしたことがメディアで報じられていました。

選択と集中の時代とは言え、店のメニューは、なんと“野菜炒め”1本勝負。野菜の量は普通盛りでも400グラムあり、成人の1日の野菜摂取目標量の350グラムを上回る十分な量の野菜を食べることができるそうです。味付けは、しょうゆ・ポン酢・みその3種類ですが、テーブルにはカレー粉や、とうがらしとニンニクを混ぜた調味料もあり“味変”が可能。リピーターも飽きさせず、野菜をより多く食べてもらうことに徹底的にこだわっているそうです。当該店舗は『肉が食べたい』『魚が食べたい』という層向けのお店はたくさんありますが、『野菜を食べたい』というときに、どこに行こうかというと思い浮かびにくく、しかし『野菜を食べたい』という層は確実にいると思うので、この店が1つのカテゴリーになればいいと思っています」と取材に答えていました。確かに真理かもしれません。

驚くのは、当該店舗を運営しているのは、首都圏を中心とした居酒屋などの飲食店に野菜を卸している業務用の野菜の卸売会社だということです。
コロナ禍の影響が長期化し、逆風が吹き止まない状況にある外食業界ですが、当該店舗を運営しているような野菜の卸売業者も同様です。しかも、会社が扱う野菜は、全国の契約農家で数か月前から作付けされているため、飲食店からの注文が減っても、急に出荷を止めることはできません。このため、農家の人たちが丹精込めて育てた野菜も、卸し先がなければ倉庫に留め置かれ、廃棄につながる可能性も出てきてしまうのです。

コロナ禍で行き場をなくした“野菜”と“消費者”をつなぐにはどうしたらいいのか?そこで「野菜炒め専門店」というところにたどり着いたそうです。ドライブスルー八百屋のようなサービスもされたそうですが、“コロナの状態だから消費者に受ける”もので“コロナだからできる”ことだけではなく、これからは“コロナ後も続く継続性の高い業態”を取組む必要があるとしてスタートされたそうです。この発想が素晴らしいですね。確かに、外食の需要は、大人数での「だんらん」や「交友」の場から「少人数でおいしいものを食べられる場所」「手軽にテイクアウトできる場所」に変わってきていると思いますね。

オープンした店は、テーブル席ではなくカウンター席がメイン。いわゆる「お一人様」需要を取り込み、コロナ禍でも来店しやすい店構えにし、ここでも工夫されています。結果、店で消費する野菜は1日あたり200キロで、この消費量は、同じ規模の飲食店の10軒分に相当するとのことです。

こんな展開、個人的に大好きなので取り上げてみました。
選択と集中、これを保険代理店に当てはめるなら、いつまでも●●保険事務所的旧態依然の代理店名とか看板とかは変えて、せめて医療保険専門代理店とかがん保険専門代理店とかに変えたら良いと思います。損保代理店でも第三分野はニーズが明確なので対応できると思いますし、コロナ禍で毎日これだけ多くの方がコロナ陽性になっていますので、コロナ対応医療保険とかを全面に出せば既存顧客すら来ない損保代理店事務所に人が来るかもしれません。

選択と集中の時代、保険代理店も色々考えて実行してみては如何ですか。やってみることで見える景色があると思います。やらないといつもの景色しか見れないですよ。

進む、自動車保険の無人化

  • 2022/03/08
  • Dr.ウエノの保険コラム

単独の自動車事故は、人を介さずに保険金をお支払い――。
東京海上社は2月15日から、自動車保険の保険金請求手続きに人の手を介さず、完全自動化する損保業界初のシステムを稼働させることが報じられました。

自動化の対象となる事故は、車が電柱や壁にぶつかるなどの定型的な車両単独事故で、スマホやパソコンからWebで事故の報告を受け付けて、その後の保険金を支払うまでの全プロセスをシステムが自動化対応するそうです。

これまで事故の受け付けをしてから保険金支払い手続きの完了まで2~3週間かかっていましたが、このシステムを使えば、数日へ大幅に短縮されることになります。東京海上日動では「将来的には最短30分で手続きが完了できるようにシステムを高度化させたい」としているそうです。

東京海上社が1年間に受け付ける自動車事故は、約260万件にのぼり(2020年度実績)、約6000人が自動車保険の保険金支払い業務に携わっているそうです。これまでは、事故に遭った契約者が同社の事故受付センターなどに電話やWeb経由で報告し、その後、東京海上日動の担当者が電話で、事故の確認や今後の手続きの流れなどを案内していて、また支払われる保険金の算出や保険金の支払手続きなどの業務があり、すべて人が行っていました。ただ、車両の単独事故の場合で支払い保険金額の確定が容易な事故も一定数あり、東京海上日動の場合、約260万件の事故総数のうち定型的な単独事故は約37万件を占めており、このうち約8割の30万件は人を介さず、自動化対応することが可能としています。同社が2月から稼働させる新しいシステムでは、約37万件の定型的な単独事故のうち、まずはレッカーやレンタカーなどの費用が発生せず、支払いが修理費のみの事故約5万件(2020年度実績)を、事前に設定したルールに基づいて自動的に抽出し、無人化対応するとしています。

契約者からの事故の連絡や事故状況の確認、車の損傷箇所、警察への届け出の有無などは、スマホのアプリやパソコンを使って報告してもらい、ケガの状況の確認や今後の方針などのほか、支払い保険金の案内や手続きなどは無人化するそうです。

保険金支払いの自動化システムの導入は欧米の損保会社が先行していて、アメリカの自動車保険会社「メトロマイル」は、データ分析技術やAI(人工知能)を駆使し自動車事故の受け付けから保険金支払いまでを完全自動化しているそうです。東京海上社の今回のシステムでも、事故のWeb受付やAIを活用した不正請求の検知などについて、メトロマイルの技術やノウハウを取り入れているそうです。

ただ、ネットで保険加入手続きができるダイレクト系損保会社であっても、事故対応は人が介在するのが一般的で、契約者側からしても万が一の時だからこそ人による丁寧で温かみのある対応を望む声は根強いと思われます。

損保業界で前例がない完全自動化対応が浸透するか、その鍵は人を介したサービスを上回る「顧客体験(CX)」を提供できるかにかかっていると報じていました。

東京海上社は既に満期はがきのQRコードから自動車保険更改手続きを完了できるようにしてありますので、これで事故対応も無人化となると自動車保険については保険代理店はいらないという方向ですね。

船舶戦争保険

  • 2022/03/08
  • ネクタイ派手夫の保険流通革命メルマガ

ウクライナでの戦闘で「戦争保険」というワードがたまに露出するようになりました。その中でも結構身近な航行する船舶の保険、「船舶戦争保険」について触れてみたいと思います。

船舶普通期間保険等の場合、危険の予測が著しく困難な戦争、軍事的行動、水雷その他の爆発物等との接触、襲撃、捕獲、内乱あるいは労働争議等の危険については免責としています。船舶普通期間保険等の海上保険とは別証券にて、これらの危険による損害について保険金をお支払いするのが「船舶戦争保険」です。また、さまざまな戦争危険のうち、水雷の爆発またはこれらとの接触の危険による損害のみを保険金のお支払いの対象とする保険が「船舶水雷保険」です。戦争保険と同様に、海上保険とは別証券にて引受けられています。

船舶戦争保険・船舶水雷保険は被保険利益により大きく3つに分けることができます。
(1)船舶自体に対する戦争保険
(2)費用・収益に対する戦争保険
(3)船主責任に関する戦争保険

(1)はミサイルを被弾したり、機雷に触雷する等「戦争危険」によって船舶に生じた損害等について保険金をお支払いする保険です。具体的には、全損、修繕費、共同海損分担額、衝突損害賠償金、損害防止費用について保険金をお支払いします。

(2)は本船が「戦争危険」によって稼働不能の状態となり、収入が途絶した場合において、本船が稼働能力を回復するまでの得べかりし用船料、支出せざるを得なかった経常費用等について保険金をお支払いする保険です。これには、本船の物的損傷に起因する不稼働損失に対して保険金をお支払いする条件(船舶不稼働損失戦争保険)の他に、封鎖危険による損失についても保険金をお支払いする条件(Blocking and Trapping(LOH/LOT)保険)もあります。

(3)は乗組員に対する賠償責任を除く船主責任全般に対する戦争保険(War P&I保険)と乗組員に対する船主責任の戦争保険(War Crew Liability保険)がありますが、いずれも(1)の船舶自体に対する戦争保険に付帯してお引受けします。

■除外水域
外航船に適用される航路定限は、平時の状態であるとされる「一般世界水域」と、戦争危険度の高い「除外水域」に分けられており、除外水域は航路定限から除外されています。保険料も前者は期間建(3か月、6か月、9か月、1か年)の基本料率を適用した保険料を、後者は航海の都度その除外水域の危険度に応じた航海建の割増保険料をお支払いいただくことにより保険金のお支払いの対象となります。除外水域は情勢に応じて都度変更され、保険会社のホームページ等で確認することができます。

■保険料
紛争地域の戦争危険は日々変動するため、除外水域航行にあたっては航行スケジュールに基づき、その時々の情勢に応じた割増保険料を都度保険会社から提示されます。その際、割増保険料はその提示から一定時間内(通常48時間)に水域に入ることを条件とし、かつ、当該水域内での滞泊制限日数(通常7日または14日)が設けられます。この割増保険料の提示から水域に入るまでの制限時間を「Call ××時間」、水域内での滞泊制限日数を「Stay ××日」と表します。

戦争があると金融の一つである保険も動くのです。