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ロシアの保険事情が一変 日系企業は撤退を余儀なくされるかも

  • 2022/03/22
  • Dr.ウエノの保険コラム
日本の損害保険各社がロシア向けの保険契約を停止する検討に入ることが報じられました。

欧州保険最大手の独アリアンツがロシア関連の新規契約を止めることが要因と報じていました。日本の損害保険各社はロシアに現地法人を持っておらず、アリアンツなどから再保険を引き受ける形で日系企業に保険を提供していますが、アリアンツは保険種目を限定せず、建物の損害を補償する火災保険や事故などに起因した操業停止による減益を補償する利益保険などすべての保険商品について新規契約を見合わせるとし、また工場建設などを対象にした工事保険、従業員のけがや病気に備える労災保険も止めると表明したため、再保険の入口が消滅し、結果、日本の損害保険各社はロシア向けの保険契約停止を検討せざるを得なくなった訳です。

東京海上社や損保ジャパン社はロシアではアリアンツと提携し、日系企業向けの火災保険など各種再保険を引き受けてきており、保険提供先には日系の自動車メーカーなどが含まれるとみられるそうです。また、新規契約の停止に伴い、既存契約も更新できなくなる恐れがあり、仮に日系を含めた各国企業のロシアでの事業が無保険となれば、撤退を余儀なくされる可能性があると報じていました。

では、アリアンツでなくロシアの保険会社と契約して再保険という手が考えられますが、現地報道によるとロシア政府はロシアの保険会社に対して米欧日など「非友好国」の保険会社や再保険会社、保険仲介会社との取引を禁止するとしたそうで、手の打ちようがないという状況ですね。

世界の再保険市場がロシア関連の保険の引き受けに慎重になっていることも追い打ちをかけているそうで、世界最大の再保険市場・英ロイズ保険組合がロシア事業の保険引き受けに慎重になっている他、独ミュンヘン再保険がロシアからの撤退を発表し、混迷を極めています。

財務省によると、2020年の日本の対ロシア直接投資額は前年比15%増の523億円。ロシア極東サハリンでの資源開発事業「サハリン2」など国策に関わる投資にも一部、民間保険がかかっているとされているそうです。

海外でのリスクの転嫁に損害保険は必須です。海外では保険会社営業権が持てない日本の損害保険会社は全世界に駐在所を置き、ここから「再保険」という形で保険引き受けして来ましたが、保険の入口がなくなればどうしようもなく、リスクを転嫁できなければ撤退という結論になりますね。ニューヨークの同時多発テロ事件では再保険が世界中を駆け回り、日本の損害保険会社が破綻しました。損保は世界中を駆け回りますが、再保険の手当を間違えると破綻につながる強烈なリスクを常に抱えています。
こうした意味でも損保は面白いですよね。