第281号 「無知の知と頓智気」 -2024年 5月 13日配信

「無知の知と頓智気」

先日、ある人が「私とってもトンチキなので」とおっしゃているのを聞いてびっくりしました。
トンチキとは、頓智気=気が利かない人のことなのですが、
そうおっしゃる方は、頓智気とは真逆、すごく気が利く方なのです。
そこで、ふと気づいたことがあります。
とてつもなく気が利く人には、共通点があります。
それは、「自分は気が利かない人だ」と思っている人だということです。
自分は、気配りができない人だという意識があるので、
一生懸命に周りに気を配って行動している。
それでも、もっとできることがあったのに!と、あとから気がつくから、
自分は頓智気だと思ってしまうのです。
その結果、さらに気が利く行動ができるようになる、
一つ上の気が利く行動ができても、まだその上があることに気がつき、
反省する・・・そしてさらに・・・
この循環です。

「無知の知」という言葉があります。
古代ギリシャ時代、哲学の父と呼ばれるソクラテスの言葉です。
「自分には知識がないと自覚している者は、その自覚がない者よりも賢い」という意味です。
無知である、知識がないという自覚があるから、謙虚になれる、素直に学べる。

ここまで書いてきて、アドラーの「劣等感」の定義を思い出しました。
アドラーが言う「劣等感」とは、
「理想とする自分から、現在の自分をみて、理想の姿に対する不足感のこと」なのです。
理想の自分に対して、今の自分が足りていないことに対する不足感、
ということは、決して悪いものではないのです。
※世の中で思われている「劣等感」に対するネガティブイメージは
自分と他者を比べた不足感にいつしか解釈が広がってから生まれたもので、
本来アドラーが定義した「劣等感」は、他者と比べるものではなかったのです。

自分に対する不足感、頓智気の自覚こそが、
自分の成長を知らぬ間に引き出してくれている。

劣等感、バンザイ!ですね。

足りない自分、出来ない自分、まだまだな自分を、
励まし、応援し、成長を楽しみましょう。