「言葉の一人キャッチボール」
セミナーや講演会の内容を考える上で、大切にしていることは、どのようなことですか?
よく質問されることです。
この問いに対して、自分なりの答えを考えてみると、
それは、自分の思いや自分の伝えたいことが、相手に正しく伝わるかどうか、
その一点を考えるということです。
私の中にある、根底的な考えは、
「自分が伝えたいことは、絶望的なほど相手に伝わらない」ということです。
絶望的なほど伝わらないから、どうすれば伝わるかをひたすら考え続けているのです。
それは、例えば「比喩表現」を多用することであったりします。
相手にとって分かりやすい譬え話で伝える。
人によって喩える例を変えていく。
また、相手の頭の中に具体的な絵が浮かぶような伝え方をするということも意識しています。
そして、さらに私が意識していることは、
自分が伝えた言葉を相手はどのように受け止めるだろう?
受け止めて、どのような感情や意識を持つだろう?
ということを相手の立場に立って想像するということです。
いわば、「言葉の一人キャッチボール」です。
野球のキャッチボールは、実際には一人で行うことはできませんが、
「言葉のキャッチボール」「思考のキャッチボール」は一人で行うことができます。
喩える例を変えると、将棋で自分の指した手を将棋盤をひっくり返して、
相手の立場から見てみるということをトレーニングのように行う習慣を持つということです。
「パンが無いならば、ケーキを食べればいい」
マリー・アントワネットが言った言葉だと伝わっています。
この言葉を聞いた、今日食べるものに困っていたフランスの民衆は、
当然ながら激昂し、革命につながっていったそうです。
この言葉は極端な例だとしても、
同様なことが行われていないだろうか、
言葉を発する前に、セルフチェックしていくことも大切です。
完璧に言葉を伝えることは難しくとも、意識することで、完璧に近づくことはできます。
言葉の一人キャッチボール、少し意識してみませんか。