第311号 「言葉を育てる」 -2025年 8月 11日配信

「言葉を育てる」

最近、再確認したことがあります。
それは言葉というものは、自分の中でどんどん育っていくものであるということです。
「言葉が育つ」とは、どういうことか。
一つの言葉を繰り返し使っていくうちに、その言葉が自分の中に根付き、
自然に使えるようになり、言葉に思いがこもるようになる。
ということもあるのですが、さらに重要なことがあります。
それは、その言葉が持つニュアンスや語感に対する感性が深まるということです。
どういうことかというと、
一つの言葉を繰り返し使っているうちに、その言葉が相手に与えるイメージが
人によって異なる場合もあると気づき、補足の説明を入れられるようになるのです。

例えば、「尊敬」という言葉があります。
この言葉は、「誰もが尊敬しあえる世界にする」という文脈で使用する分には、
まったく問題なく使えるのですが、単体で「尊敬する」という言葉を使うと、
少し意味合いが変わってくる場合があるのです。

「尊敬する」という言葉を聞くと、距離感や上下関係を感じる人もいます。
「尊敬」とは、目上や憧れを持つ人に対してするものであり、自分はひれ伏している状態、
と捉える人もいるのです。
私自身は、「尊敬」を英語の「respect」(リスペクト)に近い感覚で使っていました。
英語由来の「リスペクトする」は、リスペクトする側とされる側の関係性がフラットです。
私が大切にしたいのはこちら、
上下関係のないフラットな関係性の中で生まれる敬意なのです。

「尊敬」と聞いて、相手を拝み奉るようなことと理解する人もいるかもしれません。
「尊敬」という言葉を単体で使う場合、自分の思いを正しく伝えるためには、
補足の表現を入れる、あるいは、違う表現に言い換える必要があるのです。
私の考える「尊敬」は、多くの人の認識においては「リスペクト」という表現の方に近い。
このような事に気づくこと、これが言葉が育つということです。

また、言葉が育つとは、自分の思いが言葉によって磨かれて、
より立体的になっていくことでもあります。

あなたは、どのような言葉を育てていきたいですか。
どのような思いを磨いていきたいですか。
少し立ち止まって、考えてみませんか。