第144号 「ちょっと無理して」 -2018年08月27日配信-

先日、さだまさしさんが代表をされている風に立つライオン基金主催の
イベント、「高校生ボランティア・アワード2018」に二日間
参加してきました。

二日目の午前中、ボランティア・アワードに参加している高校生と
運営スタッフだけが聴講できるシンポジュームが行われました。

ボランティアに関わる著名人がパネリストとしてお話をされたり、
高校生からの質問に答えたりという内容でした。

そのイベントのなかで、エベレストのゴミ問題や富士山美化などに
積極的にリーダーシップを発揮されているアルピニストの野口健さんへの
質問がいくつかありました。
野口さんの回答が、いずれも深くて面白くて、印象に残るものでした。

高校生からの質問、
「困難に出会われた時は、どのようにして乗り越えられたのですか?」
野口さんの回答は、
「よく言われる言葉に無理をしないでね、というのがあるのですが、
これが困るんです。無理をしないとエベレストは登れませんから。
無理をして無理をして、なんとか登っている。
ただ、あるとき頂上まで300mということまで来て、体調もバッチリ、
これは行けそうだという時に、天候が急に悪化したことがありました。
ここまでも、かなり無理をしてやっと登って来た。
這ってでも行けそうな場所に頂上がある。
頂上までは、なんとか行ける。ただ、帰りは下まで降りないとけない、
それは無理かもしれない。ただ、ここで頂上を目の前にして引き返したら、
戻ってから色々言われるだろうな・・・。葛藤する。
心がアンバランスになる。結局ここで下した結論は、
戻ろうというものでした。
ちなみに一緒にそこまで登ったパートナーは、俺は行く!という結論。
彼は、遭難しましたけどね。私たちの世界、登山の世界では、
簡単に命を落とす。
していい無理と、してはいけない無理があるのですね。
どこまでが、してもいい無理なのか、どこからが、
してはいけない無理なのか、見極めは難しいのですが。

そのほかの野口さんのお話で印象に残ったものをいくつかご紹介しますと、

・リーダーの役割の一つは、みんなが一番嫌がる仕事を率先して、
 嬉々としてやること。
 野口さんの場合は、登山チームの排泄物を背負って降りること。

・5つ積んでも、4つは崩れる。それでも1つは残る。
 その残った1つの上に、また5つ積む。
 そこでまた4つ崩れて2つが残る。それの繰り返しなんですね。

実践し体験された人の言葉は、軽妙な話ぶりでも、ずっしりと心に響きます。
もっと、もっと、ずっと聴いていたいお話ばかりでした。

ちょっと無理して出かけてみると、素敵なお話や気づきと出会えるんですね。
あなたも、ちょっと無理して、学びの場へ出かけてみませんか。