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一物多価

  • 2021/11/08
  • Dr.ウエノの保険コラム
損害保険は同じ商品で且つほぼ同じ補償内容なのに各保険会社によって保険料が異なることをご存知でしょうか。しかも一物二価くらいならまだしも、一物多価という現実があります。

昨年の週刊東洋経済誌「生命保険の罠」という7月25日号にこんな記事が掲載されていました。(掲載文面通りを転載)
「これまで地方は情報や移動の壁に守られてきた。だが、火災保険に年間1000万円以上払ってきたという地方の酪農家が、オンラインで同一以上の保障を年300万円で得られると説明され、乗り換えたなどという事例も出てきている。」

この背景を紹介すると、この契約は火災保険に地震拡張担保特約が付帯されているものでした。いつもは満期更改の際、多忙な社長さんは内容も余り見ず「じゃあ更改しておいて」で終わったのでしょうが、昨年はコロナ禍で外出もできなかったので、たまたま内容をしっかり見ていたら「何と火災保険に1000万円以上支払っていたことに改めて気づき、コロナ禍で景気がどうなるかわからないので経費削減で保険料が安くならないか」と考えられて、地元の保険会社2社に電話されました。現在加入している保険代理店の他には保険代理店を知らないので保険会社に直接電話されたものです。そうして保険会社から社員が来て、現在加入の保険証券を見せたら2社の社員ともに「うちでは無理です」と言ってその場で帰ったそうです。地方で火災保険1000万円以上の契約はそんなにあるものではありませんし地震拡張担保特約が付帯されているので、保険証券を見た瞬間に無理と判断したようです。保険料の相見積もりは本社に稟議を出しつつ求率して行きますが、過去に経験値がないと残念ながらできないと思います。お客様から直接電話があって保険会社の指示で来るとするとおそらく一番下の社員が来たと推定されますので、そりゃあ無理でしょうね。で、経営をみてもらっている大阪の経営コンサルタントに保険証券がわたり、結果、大阪の保険代理店が相見積もりで300万円の保険料を提示し切り替えられてしまいました。
同じ保険商品でほぼ同じ補償内容で保険料が3分の1以下になった訳で、一物二価にしても乖離し過ぎと思われた方が多いと思います。一体、どんな割引使ったらできるのでしょうかね。

実は先般も火災保険の相見積もりの事例を耳にしました。こんな内容です。火災保険の満期で他社から相見積もり出たのであなたのところでもっと安くできないか確認して欲しいとの知り合いの保険代理店に依頼をにあったものですが、相見積もりの保険料は何と2000万円という大型案件でした。で、依頼を受けた保険代理店は躍起になって他社に相見積もりを依頼したところ、4000万円の保険料提示がありました。なんだよーということでもう1社見積もりを取ったら5500万円の見積もり提示がありました。どうやら普通に求率すると5500万円で、本社と掛け合って頑張って求率してくれて4000万円という結果だったそうです。一体保険料2000万円はどうやって算出したのかわかりませんが到底太刀打ちできませんので、ここで切り替えられたそうです。

コロナ禍で毎年支払わないといけない損害保険料については相見積もりされる可能性が高いと思います。特に地方の契約は10年以上同じ保険料というところが多いと思いますが、こうした案件は絶好の標的だと思います。
前述の週刊東洋経済誌には「こういう伝播は早い。地方の保険代理店の淘汰が一気に進む可能性がある。」とも書かれていました。

昔、某保険代理店が法人保険のサイトを作っていましたが、10年以上前でも毎月500件ほどの問い合わせがありました。当時は大手企業からの照会が中心でしたが、今、こうしたサイトが立ち上がれば地方からの依頼が殺到するのではないかと思います。

一物多価をやめない限り止まらない損保の相見積もり競争。一方でこのレート競争が損保代理店の醍醐味の1つでもありますが。ポイントはこの商品だとこの保険会社が安い保険料を提示できるか知っているか否かだけで相見積もり競争は勝ち続けられると思いますよ。