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進む、自動車保険の無人化

  • 2022/03/08
  • Dr.ウエノの保険コラム
単独の自動車事故は、人を介さずに保険金をお支払い――。
東京海上社は2月15日から、自動車保険の保険金請求手続きに人の手を介さず、完全自動化する損保業界初のシステムを稼働させることが報じられました。

自動化の対象となる事故は、車が電柱や壁にぶつかるなどの定型的な車両単独事故で、スマホやパソコンからWebで事故の報告を受け付けて、その後の保険金を支払うまでの全プロセスをシステムが自動化対応するそうです。

これまで事故の受け付けをしてから保険金支払い手続きの完了まで2~3週間かかっていましたが、このシステムを使えば、数日へ大幅に短縮されることになります。東京海上日動では「将来的には最短30分で手続きが完了できるようにシステムを高度化させたい」としているそうです。

東京海上社が1年間に受け付ける自動車事故は、約260万件にのぼり(2020年度実績)、約6000人が自動車保険の保険金支払い業務に携わっているそうです。これまでは、事故に遭った契約者が同社の事故受付センターなどに電話やWeb経由で報告し、その後、東京海上日動の担当者が電話で、事故の確認や今後の手続きの流れなどを案内していて、また支払われる保険金の算出や保険金の支払手続きなどの業務があり、すべて人が行っていました。ただ、車両の単独事故の場合で支払い保険金額の確定が容易な事故も一定数あり、東京海上日動の場合、約260万件の事故総数のうち定型的な単独事故は約37万件を占めており、このうち約8割の30万件は人を介さず、自動化対応することが可能としています。同社が2月から稼働させる新しいシステムでは、約37万件の定型的な単独事故のうち、まずはレッカーやレンタカーなどの費用が発生せず、支払いが修理費のみの事故約5万件(2020年度実績)を、事前に設定したルールに基づいて自動的に抽出し、無人化対応するとしています。

契約者からの事故の連絡や事故状況の確認、車の損傷箇所、警察への届け出の有無などは、スマホのアプリやパソコンを使って報告してもらい、ケガの状況の確認や今後の方針などのほか、支払い保険金の案内や手続きなどは無人化するそうです。

保険金支払いの自動化システムの導入は欧米の損保会社が先行していて、アメリカの自動車保険会社「メトロマイル」は、データ分析技術やAI(人工知能)を駆使し自動車事故の受け付けから保険金支払いまでを完全自動化しているそうです。東京海上社の今回のシステムでも、事故のWeb受付やAIを活用した不正請求の検知などについて、メトロマイルの技術やノウハウを取り入れているそうです。

ただ、ネットで保険加入手続きができるダイレクト系損保会社であっても、事故対応は人が介在するのが一般的で、契約者側からしても万が一の時だからこそ人による丁寧で温かみのある対応を望む声は根強いと思われます。

損保業界で前例がない完全自動化対応が浸透するか、その鍵は人を介したサービスを上回る「顧客体験(CX)」を提供できるかにかかっていると報じていました。

東京海上社は既に満期はがきのQRコードから自動車保険更改手続きを完了できるようにしてありますので、これで事故対応も無人化となると自動車保険については保険代理店はいらないという方向ですね。